ディズニーのテーマパークは世界に6ヶ所ある。開業順にカリフォルニア、フロリダ、東京、パリ、香港、上海だ。東京の開業は1983年である。
事業のスキームという点で東京だけは他と異なり、ディズニーは遊園地事業に対する「エクィティ」を持っていない(オリエンタルランドに対して出資していない)。
この反省からディズニーはパリでは目いっぱい、エクィティを持つスキームを組み立て、成功間違いなしと自信満々で臨んだ。開業は1992年である。ところが集客が振るわずこのプロジェクトは赤字続きとなってしまう。メンテが行き届かないためであろう、最近では「薄汚れ古びて見える」とまで言われている。
不振の原因を一言で言うなら、「ディズニーの世界観がヨーロッパ人には受け入れられなかった」というところだろう。
シンデレラや白雪姫のように、ヨーロッパ由来の話についてアメリカ人がリライトしたものをわざわざ見たいとは思わないし、パリっ子にとってミッキーマウスは所詮は「ネズミ」、黄色い象が空を飛んでいるからと言ってそれが何なんだという訳だ(ダンボのこと)。
私見では設置されている物は何でもぶっ壊していいというエリアをパーク内に設ければフランス人には大受けすると思うのだが、これはディズニーの世界観に合わない。
香港ディズニーランドはパリほどではないが、やはり不振だ。ほかのディズニーのパークより一回り小型で海外からの観光客がわざわざこのために訪れるというほどの魅力はない。
上海ディズニーランドは事業費55億$(6100億円)という巨費を投じて2016年6月にオープンした。最大のポイントは周辺人口の多さで3時間圏内になんと3.3億人が住んでいる。チケット価格は時期により370-499元(6100-8200円)と変動するが、決して安くない。
オープン後の評価は入り混じっていた。ターザンで雑技団の技が登場したり、ライオンキングで京劇風の衣装の人物がいたりといった話も含め、好意的な報道も多かった。
開業して一年が経った2017年6月、年間の入場者数が1100万人となったことが公表された。ちなみにこれは東京ディズニーランドの開業初年度の1000万人よりも多い。上海ディズニーランドはその後も好調と伝えられている。
カリフォルニア、フロリダ、東京のディズニーのパークに共通の悩みは客が多すぎることだ。ファミリー向けのビジネスという事業の性格上、来場者数を減らすことを狙ってむやみに入園料を高くするわけにもいかない。なんとも贅沢な悩みだ。
ジャパン・トランスナショナル 坪田 清
週刊住宅 2019年3月18日号掲載