「コアシビック」

 アメリカは時価総額で世界の上場リートの61%を占める(日本は6.5%)圧倒的なリート大国だ。「刑務所リート」は通信アンテナ基地リート、屋外広告看板リート等と並んでエキゾチックなリートの代表格で、2社が上場している。「コアシビック」と「ゲオグループ」で、両社とも数万ベッドを運営している。

 

 これらはリートといっても、刑務所を建てて受刑者を収容して儲けようとして設立されたものではない。もともとは刑務所の業務の一部を民間委託して効率化を図るという、運営コストの削減が狙いだった。こういった刑務所の民営化は1984年にテネシー州から始まったのだが、後に一部の会社でリート適格となるように契約の形が改められた。

 

 両社がリートとなることを選んだのは税制上の優遇を受け配当を増やすためでもあった。

 

 一時期、アメリカではなんでも民営化すれば効率が上がるとの論が高揚し、いろいろな政府機関が民営化された。刑務所の民営化もその流れの中の一つだ。

 

 「刑務所」と単純に書いたが、拘置所、留置所、矯正施設、不法移民の収容所その他、刑務所以外の以外の施設も含まれる。

 

 トランプ大統領は「悪い人間はどんどん刑務所に入れる」としていたことから彼の当選後、両社の株価は3か月で倍になった。その後「不法移民に対して厳しい政策を取る」との発言で、株価はさらに上昇した。刑務所リートはいわゆる「トランプ銘柄」の代表格である

 

 しかしながら現在、アメリカでは「刑務所の民営化」は非常に評判が悪い。

 

 民間会社なので当然、利益拡大を目指すのはともかく、あからさまな費用削減を実施したりする。

 刑務所等のスタッフの質も落ちている。これは受刑者に対する暴行殺人が多発している原因の一つともされる。

 拘留した人間を働かせ、極端な低賃金しか支払わなかったとして集団訴訟も起こされた。

 

 収容者による暴動も多発しているが、刑務所での暴動は世界的には珍しい話ではないので、これは民営化のためだけではないだろう。

 

 しかし、流れとしてはアメリカでは刑務所の民営化は徐々に消えていくことになる可能性が高い。食事や清掃といった業務の部分的な民間委託ならともかく、「刑務所運営」そのものから利益をあげて株主へ配当するというのは、すなおに考えて無理がある。

 

 コアシビックやゲオグループも長い目で見ると、時代のあだ花なのかも知れない。

 

                    ジャパン・トランスナショナル 坪田 清

 週刊住宅 2019年1月21日号掲載