「ブリティッシュランド」

 イギリス最大規模のリートであるブリティッシュランドの主力ビジネスはオフィスビルとリテールで、わずかだがマンション事業も行っている。資産ポートフォリオは123億£(1.8兆円)だ。

 

 イギリスに「リート制度」が出来たのは比較的新しい。日本のリートが2001年からスタートしたのに対して、イギリスのリート制度は2007年、既存の不動産会社が税制適格を受ける形でスタートした。ブリティッシュランドもリート制度創設時からの1社である。

 

 近年、同社が最もひやりとしたのは、2016年6月23日のブレグジットの国民投票直後の事だ。イギリスのEU離脱が実現すると、ロンドンから金融機関がどんどん大陸ヨーロッパに移りシティのオフィスビルはがらがらになるのではないかとの懸念が走った。

 

 その結果、個人投資家の間でパニックが発生、リートと似た仕組みである「商業不動産ファンド」に解約が殺到して危機寸前まで行き、多くのファンドが解約受付を停止した。

 

 商業不動産ファンドで問題が起きたのはこれらがオープンエンド型だったためという面がある。リートのようなクローズドエンド型のファンドは、株価は下がったが直撃は免れた。

 

 当時のブリティッシュランドの株価の動きは興味深い。下落を開始したのはブレグジット国民投票の2週間ほど前からで、投票結果を受けて大きく急落した。

 

 ブレグジットを問う国民投票については「事前予想ではEU離脱案は否決とされ、承認は予想外だった」とされるが、ブリティッシュランドの株価はそれとは異なるストーリーを示している。離脱案承認の可能性は相当程度、事前に投資家に読まれていたのだ。

 

 今、ブリティッシュランドは資産圧縮を図っている。主目的は債務削減なり資産の割に低い評価にある株価のテコ入れだ。2017年3月にはシティに所在する大型ビル、「チーズグレーター」を共同所有者とともに香港の不動産会社に10.2億£(1460億円)で売却した。「チーズグレーター」という名の由来は、同ビルの斜めに傾いた外壁を持つ形状が「チーズおろし器」に似ていることにある。チーズグレーター以外でも、シティの大型ビルには外観から受ける印象に基づいていろいろなニックネームが付いている。

 

 オフィス賃貸会社にとり意外な助っ人となったのはウィ・ワークに代表されるシェアオフィス(コワーキング)会社だ。ロンドンでは現在、彼らが盛大に床を借りてくれている。ウィ・ワークはいまやロンドンでは最大のテナントなのだ。

 

                ジャパン・トランスナショナル 坪田 清

 

週刊住宅 2019年 1月1日号掲載