「ファニーメイ」

 1929年に始まったアメリカの大恐慌は銀行の連鎖倒産まで呼び、リスクがある貸し出しは控えられた。定期預金は当時、最長5年だった。いつ預金引き出しの波に襲われるか分からないので、銀行が貸し出せる住宅ローンは「5年物」が最長となってしまった。これでは不動産は動かない。信用はますます収縮していった。

 

 当時の政府が推進した施策が「住宅ローンの証券化」である。

 

 政府は、銀行が融資した長期の住宅ローンを外郭団体に買い取らせた。これなら銀行は安心して住宅購入者向けの長期のローンの貸し出しに励むことができる。さらにこの外郭団体は買い取ったローンを「束にしてスライス(証券化)」し、投資家に売る。ここがミソだ。

 

 個別の住宅ローンにはある程度の「確率」で貸し倒れが起きる。投資家としては「運が悪いと」貸し倒れにひっかかるわけだ。このようなものでは投資に向かない。

 

 しかし十分多い数(例えば1000本)の住宅ローンを集めれば貸し倒れは確率計算に従い、かなり確かに予見可能な額として発生する。その額を「束」の中からあらかじめ差し引いておけば、残りの額にはきわめて高い安全性が見込まれるわけだが、この「束」のままではあまりに巨額すぎるので、小口化(例えば100万円単位)する。

 

 このようにして誕生したのが、モーゲージ証券(MBS)であり、この外郭団体は後にファニーメイとなった。今でもアメリカの住宅金融の基幹をなす組織である。

 

 ファニーメイは銀行が融資したどんなローンでも買うという訳ではない。一定の基準を満たした安全性が高い、プライムローンだけ買取に応じる。

 

 そのファニーメイが姉妹会社のフレディマックとともに破綻したのは、2008年のリーマンショック前後だ。当時、両社向けには合計1880億$(21.4兆円)の公的資金が投入された。

 

 両社は銀行から直接ローンを買っているほか、下ごしらえをされたMBSを投資銀行・証券会社から購入しており、この中に質が悪い、サブプライムローンが大量に混入していた。

 

 その後、ファニーメイとフレディマックに関しては、現在も取り扱いを巡り混迷が続いている。政治問題として非常にこじれてしまっているのだ。

 

 公的資金は金融危機のさ中に大慌てで出され、どのような条件での出資なのかは後付けで決まった。それによれば、利益のほぼすべてを財務省に優先配当しなくてはいけない。

ファニーメイは長らく上場しており、上場廃止後の今でも一般の小口株主が多数いる。しかし現行制度では彼らが配当を受け取ることは永遠にできない状態なのだ。

 

                        ジャパン・トランスナショナル 坪田 清

週刊住宅 2018年12月10日号掲載