「エクステル」

 マンハッタンのセントラルパークのすぐ南にある57番街には「億万長者通り」というニックネームがついている。この通りは東西に走る周囲のストリートの中で幅員が広めで、セレブが住む超高級マンションが多く建っている。

 

 ニューヨーク本拠のデベ、エクステルの名を一段と髙らしめたのもこの通り沿いに建つ、「ワン57」という名称の最上階が90階という超高層・超高額マンションである。

 

 何よりも度肝を抜いたのは、このマンションのペントハウスだ。2014年にクロージングされた成約価格が、1億47万$(114億円)という巨額さだったのである。上下の二階分を合体させて一つの住戸とした、「デュープレクス」と呼ばれる間取りである。

 

 これは単体の住宅としては今でもニューヨークで史上最高額だ。広さは10,923sqft(307坪)なので、坪単価は3680万円となる。マンハッタンで最もラグジュアリーなマンションの価格は大体坪1800~2200万円程度とされるので、これらと比べても破格だ。

 

 誰がこの物件を買ったのかは、なかなか判明しなかった。ニューヨークでの高額物件はペーパー会社や信託を当事者として登記する例が増えている。それでもたいていの場合は誰が真の買主なのかは分かるものなのだが、この時は情報は全く洩れなかった。ニューヨークの不動産関係者も今回は随分と口が堅いと、メディアは驚いていた。

 

 今年の3月になって、ウォールストリート・ジャーナルがこの物件の買主はデルの創業者兼CEOのデル氏だったと報じた。本人からの否定がないので、この話はどうやら本当のようである。

 

 ワン57は高さが1005フィート(306m)だ。ところが続いて建てられた近傍の432パークアベニューの高さは426mで、ほどなく抜かれてしまった。しかしこれも来年竣工予定の435mのマンションに抜かれる。さらに2020年には472mの高さの物が竣工予定だ。

 

 ちなみに高尾山のふもとと頂上の標高差は約408mだそうだ。これらのマンションは「山」の高さなのである。

 

 このようにマンハッタンでは今、超高層・超高額マンションのラッシュだ。しかしこれらの物件の市況は今、大きく崩れていて、販売面では大苦戦をしいられている。

 

                        ジャパン・トランスナショナル 坪田 清

週刊住宅 2018年11月12日号掲載