アメリカの実店舗型小売業にとって2017年は大変な年だったが、2018年は多くの会社は持ち直した。そのような中で、シアーズの苦境は続いている。
今もまさにそのさ中だ。10月15日に迎える債務返済についてデフォルトを避けるためのディールが未だにまとまっていない。同社は去年、納入業者の離反から危機に陥った。慢性的に綱渡り状態なのである。
同社は1989年にウォルマートに抜かれるまで、アメリカで最大の小売業会社だった。
昨年1月には150店舗、今年1月には100店舗の閉店予定を発表、かつ年の途中でも追加で閉店予定を発表してきた。これらの結果、ピーク時には2019店(3500店以上とする説もある)あったものが、今年6月時点には894店へと激減している。
2011年以降の赤字の合計は110億ドル(1.2兆円)を超えた。時価総額は3.5億ドル(400億円)しかないのでもう中小企業の域である。
小売業の中でも百貨店という業態は特に苦しいとはいえ、シアーズの業績はひどすぎるわけだが、批判の対象となっているのはCEOのランパート氏だ。
同氏は若い頃に投資銀行業務でいくつもの成功を収めて「風雲児」扱いされていた。しかしシアーズの大株主兼CEOとなってしばらくした頃から、おかしくなってしまった。
報じられるところによれば彼が日常、暮らしているのはフロリダにある富裕層が多く住む島だ。イリノイ州にあるシアーズのスタッフとはテレビ電話で日常的にコミュニケートし、彼が本社に出向くのは年1回、株主総会の時以外はほとんどないという。
事実だとすれば呆れるしかない。同氏はシアーズから大型の資産を何回か買っており、これが例えシアーズの支援のためだとしても、利益相反の疑いは持たれる。もしシアーズが倒産ということになれば、ランパートCEOは非常に厳しい立場に置かれるだろう。
腕時計の通販からカタログ通販へ、そして百貨店というビジネスをパイオニアとして成功させ、一時は金融業も営むコングロマリットになりながらも、シアーズには換金できる資産がもうわずかしか残っていない。普通なら頼みの綱である店舗用不動産のうち優良なもの235店は2015年にリート化して外出しし、もう現金化してしまっているのである。
ジャパン・トランスナショナル 坪田 清
週刊住宅 2018年10月1日号掲載