「中国投資公司」

 「中国投資公司」は大型不動産取引としては以前、目黒雅叙園の買収で日本の市場に一瞬だけ顔を見せたことがある。中国投資公司の「公司」は「コンス」と読む。


 中国における「外貨準備」の担当は、国家為替局という部局だ。


 外貨準備は、例えば貿易黒字状態のとき、受け取った輸出代金としてドルやユーロといった「外貨」が手元にたまり、これが増えてゆく。ある時期、中国の外貨準備は手に余るほどの巨額さになってしまった。


 外貨準備の基本は「安全運用」で、通常は米国債、ユーロ国債、モーゲージ証券(MBS)等で運用される。しかしこれらの国債や証券は金利も低く、投資としてはつまらない。


 そこで中国は2007年、当時の外貨準備の約1割をリスクを承知で高い利回りを狙う、いわゆる「積極運用」に振り向けることにした。


 国家為替局から資金を分けてもらってこの「積極運用」担う組織としてスタートしたのが中国投資公司だ。中国ブームの折り、鳴り物入りで華々しいデビューをしたわけだ。

 

 ところが出発当初から、「高い利回りを狙う」とは真逆の任務を負わされた。

 

 国内の金融システムへのテコ入れと、資源獲得を狙ったアフリカへの投資への相乗りだ。中国投資公司は出だしから「政策投資分」の荷物を背負って出発した形となった。さらに運が悪いことに、正式設立の直前に30億$(3330億円)分も買ったブラックストーン株がサブプライムショックで暴落してしまった。

 

 資金の流れの面で、国家為替局は中国投資公司の上位にある。

 
 国家為替局は中国投資公司の投資の下手さに立腹し、自らも積極運用を手掛けるようになった。実際、7年後には中国審計署(日本の会計検査院に相当)が「中国投資公司は海外で巨額損失を出し、内部の管理体制はめちゃくちゃだ」と報告したことがあった。

 
 その後、今年7月、中国投資公司は昨年の純益が前年比37.6%増の1030億$(11.4兆円)という好決算を発表した。特に海外投資が好調だった。


 実際、中国投資公司は昨年ヨーロッパ最大の物流会社ロジコーを122.5億€(1.36兆円)で買収、ニューヨークでもファンドを通して大型ビルの持ち分を取得していたのだった。

 

                      ジャパン・トランスナショナル 坪田 清
週刊住宅 2018年9月17日号掲載