超高齢化が目立つ香港のタイクーン(大君・財閥の総帥)たちもそろそろ、という話が出ています。もっともこの話は過去に何度も出ているので、今回もまた彼らが元気に長生きする可能性もあります。年齢をものともせずいまだに陣頭指揮を取っているタイクーンが多いことと、彼らのほぼすべてが不動産がらみの財を成している事が香港の特徴です。
最も有名なタイクーンはなんといっても李嘉誠(リ・カーシン・89才)ですが、グループの旗艦・不動産会社のCKアセットほかの会長の座を長男のビクター・李に譲ると3月に発表しました。CKアセットは旧称の「長江実業」の方が知られています。東京駅そばのパシフィックセンチュリープレイスを手掛けた弟のリチャード・李の方が日本では有名ですが、長男が後継というのは順当なところでしょう。
もっともこれで代替わりがうまくいくかどうかは、不明です。こればかりはやってみないと分かりません。プライベートバンクが発達しているヨーロッパやアメリカと違って、華僑の間には生前に「事業承継計画書」を準備しておくという風習はないのです。またオープンに後継者問題の話をするという文化でもありません。
大手デベの新世界発展の創業者会長だった鄭裕トウは86才だった2012年、現職のまま脳出血により倒れ、4年間の昏睡状態の後に不帰の人となりました。
デベ最大手の新鴻基地産では代替わりの後に3人兄弟のうちの2人が贈賄で起訴され、一人が有罪、一人が無罪となる事件が起きました。これも何らかの形で事業承継に問題があったのでしょう。
マカオのカジノ王のスタンレー・ホ(96才)は公認の妻が4人、子供が17人です。非公認の人数は本人も含めて、誰も分からないでしょう。先の鄭裕トウと同様にバタッと行くまで現役を貫き、そのあとに大混乱が起きるのではと懸念されています。4月に旗艦会社のSJMホールディングスについて娘と夫人が共同会長となって後を継ぐと発表、これを受けて同社の株価は11%の急騰をしました。スタンレー・ホ亡き後の混乱が小さくて済むのではとの期待感からですが、見通しがあまいという気がします。
実際、香港、シンガポール、台湾で上場する同族企業の場合、世襲前の5年間に比べて世襲後の3年間の株価は平均、4掛けに下落するのだそうです。
ジャパン・トランスナショナル 代表 坪田 清
三井不動産リアルティ㈱発行
REALTY-news Vol.37 6月 2018年 掲載