昨年、2017年はアメリカの実店舗型小売業にとって厄年でした。特に大手百貨店の不調は著しく、さらにアパレル、靴、スポーツ用品、おもちゃの販売店等でも破産申請に追い込まれる会社が相次ぎました。
しかし悪い話だらけだったこの風向きが、昨年末のホリデーシーズンから変わりました。朗報は出だしのブラックフライデーにおいて実店舗の売上げが予想外に好調だったという話から始まり、締めてみると11-12月のこれらの会社の売上げは前年比4%増となりました。リーマンショックの金融危機以降でベストな伸び率となったのです。
同時期のオンライン通販会社の売上げは10.4%、小売全体は5.5%の伸びです。実店舗会社が伸びた最大の理由はアメリカ経済がますます良くなってきた事にありますが、従前のパターンであれば、全体の伸びをオンラインに食われて実店舗は売上げを落しかねなかった所、今回はそれがプラスへと伸びた訳です。
実店舗会社がオンライン通販に力を入れ、巻き返しを図っている事も見逃せません。
モール・ビジネスは当然、実店舗型小売業の盛衰から大きな影響を受けます。各所の核テナントである百貨店大手のメイシーズ、シアーズ、JCペニーは2016年8月以降、三社合計で560もの店舗を閉じました。特にシアーズは不採算店の閉鎖を重ねてきた結果、2010年には4038店舗あったのが、昨年9月時点では1104店舗へと激減しています。
これらを見て「迫る小売業の終焉」「モールの緩慢な死」といった語り口の話も昨年は多くみられました。その雰囲気が、とりあえず年明けには大きく変わったわけです。
不動産業界はこの動きを昨年の終盤の段階で先取りしていました。大型のモールのポートフォリオに2件、買いが入ったのです。
一つ目はフランスの商業不動産大手、ウニベイル・ロダムコによるウエスト・フィールドの買収です。ウエスト・フィールドはオーストラリア本拠の会社ですが、保有するモールの多くはアメリカとイギリスにあります。
二つ目はカナダ本拠の不動産投資会社ブルックフィールドによるアメリカのモールリート第2位、GGP(旧称ジェネラル・グロウス・プロパティ―ズ)の買収です。
二件とも買収価格が期待よりもかなり低かったことを始めとして気になる点がいくつかあるのですが、とりあえずモールに大口の買い手が出たわけです。
ジャパン・トランスナショナル 代表 坪田 清
三井不動産リアルティ㈱発行
REALTY-news Vol.35 4月 2018年 掲載