ニューヨークの超高額マンションの大幅価格下落(続報)

 今年の2月、この欄でニューヨークのウルトラ・ラグジュアリーなマンションで価格下落が起きていることを報告させていただきましたが、状況は一段と悪化しています。現在の状況をご報告します。

 「ウルトラ・ラグジュアリーなマンションとは」ですが、新築・中古、ともに大体「最低で一戸1000$11.2億円)から1600$17.9億円)以上」の物件を指します。

 今回、このセグメントの下落を印象づけたのは、「ワン57」内の住戸の競売です。「ワン57」は90階建の超高層マンションですが、通常の住戸は安い物でも一戸2000$22.4億円)以上します。「超高層・超高額マンション」のさきがけで、このワン57がきっかけとなって、マンハッタンでは鉛筆のように細い「超高層・超高額マンション」の開発が続いています。

 11月に入り、ワン5779階部分の住戸が差し押さえ競売に出され応札参加者5名の間で競り上がり、結局3600$40.3億円)での落札となりました。この住戸の2014年当時(この頃が市場がピークだった)の販売価格は5090$57.0億円)でしたので、29%下落となります。流通市場ではワン57内の65階部分が当初の販売価格から23%安い価格で、62階部分が同26%安い値段で成約となっています。

 「超高層・超高額マンション」の第2号である「432パークアベニュー」内の住戸も、大きく下げています。89階建ての80階部分、直近での表示上の販売価格が4425$49.6億円)とされていた物件の成約価格は3930$44.0億円)です。このマンションは全106戸中82戸が販売済みですが最近は売れ足が鈍り、今年になってからは12戸しか売れていません。

 先のワン57も全92戸のうち売れ残りをまだ10戸以上、抱えています。アメリカのマンション販売では、売主は買主に対して竣工後1年間程度、売却禁止を求めるのが通例です。デベは「1年あれば売り切れるだろう」と読んでいるわけですが、今回のように売れ残り在庫を抱えているデベにとって、以前の買主による損切り売却はダブルパンチです。

 中古流通市場でも、リスティング価格からかなり下の水準での成約が相次いでいます。一番極端なのはピエールホテル内のマンションで、4年前に1.25$140億円)でリスティングされた物件が4400$49.3億円)で成約しました。昨年7200$80.6億円)でリスティングされた築100年のタウンハウスは5200$58.2億円)で成約となっています。

                                  ジャパン・トランスナショナル 代表 坪田 清

(ドル=112円 2017126日近辺のレート) 

三井不動産リアルティ㈱発行

 

REALTY real-news Vol.31 12月号 2017年 掲載