シンガポールの住宅市場、超長期低落からやっと底打ち

 前回に引き続きシンガポールについて、今回は住宅市場の話です。
 シンガポールでは2013年をピークに住宅価格が下がり続け、今年4-6月期までで15四半期連続の下落という事態に陥っていました。しかしこの9月下旬にBNPパリバが、また10月に入って政府の都市再開発庁が暫定値ですが市場の底打ちを発表しました。ちなみにデベの株価はこれらに先行して、春先頃までには大幅高となっていました。現物不動産市場で飛び交う話題に明るさを実感したのも、4~5月頃です。

 

 現在に至る住宅価格の超長期の下落は、シンガポール政府による不動産市場抑制策が原因です。外国勢の購入による価格上昇を懸念した政府は2009年から市場抑制策を導入、それでも住宅価格の上昇は止まらず、2013年に一連の非常に厳しい抑制策を追加的に導入、この結果、住宅価格が下落し始めた訳です。

 

 その後、政府の抑制策はなかなか解除されませんでした。ピーク比で11.7%の価格下落となった今年3月、市場抑制策に関しスタンプ税の一部軽減やモーゲージの借り入れ制限を緩めるといった緩和措置が取られました。小規模なものとはいえこの4年間で初めての緩和措置です。(「スタンプ税」は「印紙税」と訳す場合もありますが、政策手段として税率を機動的に変える点、日本の印紙税とは大きく異なります。)

 

 これと同時期に市場で明るい話が多く出てくるようになりました。新築住宅販売件数が4年ぶりの水準に回復した、政府による土地公売で応札者が24社もあった等です。特に目を引いたのは中国勢の龍光地産と南山集団による10億S$(830億円)という巨額の落札です。この入札では二番札も9.257億S$(768億円)と高額でした。住宅用地の仕入れ市場は半年近く前には回復済みだったのです。

 

 シンガポールは住宅価格のアップダウンが激しい点で、香港と似ています。1996年にピークだった住宅価格はその後、東アジア通貨危機とSARS問題を挟んで45%も下落したことがあります。今回の下落幅はピーク比で12%程度ですから、小幅だったとも言えます。

 

 なおシンガポールの住宅に投資する外国勢は一番多いのが中国、次にマレーシア、インドネシアの順です。購入者に占めるこれら外国勢の比率を2013年当時と現在を比べると中国勢はほとんど変わっていませんが、マレーシア勢、インドネシア勢は減少しています。
              ジャパン・トランスナショナル 代表 坪田 清
(S$=83円 2017年10月10日近辺のレート)