最近のアメリカのマンションに見る工夫

 アメリカの新築マンションで最近、目につくようになった商品企画上の工夫のうち、比較的容易に日本でも取り入れることができそうな例をいくつか列挙してみたいと思います。

 

 ラグジュアリーなマンションで、大きな住戸の購入者が同じマンション内の小さな住戸を買う例が増えていて、これらは「アクセサリー住戸」と呼ばれています。子供用の住戸に使われる場合があるほか、さまざまな使われ方をしているようです。

 

 これもラグジュアリーなマンションの話ですが「ドライブウェイ」が設置されて好評を得ている例が散見されます。「ドライブウェイ」とは殺風景な車路ではなく、デザイン的にもしっかりとした自動車専用の動線で、多くの場合、建物の一部にまるごと取り込んで設置されます。修景を施した「モーター・コート」と呼ばれる自動車専用の中庭を設ける例もあります。どちらの場合も自動車を利用した場合専用の立派なエントランスが用意されています。

 

 これらの直接的な効用はプライバシーなりパパラッチからの保護ですが、デベにとってそれ以上に大きいのは「ドライブウェイ」により物件の高級感がぐっと上がることです。この工夫はマンションに限る必要はなさそうです。ホテルはもちろん、優れたドライブウェイを設置すればオフィスビルでもグレード感が増すように思われます。

 

 プール付きのマンションも増加しています。アメリカ人にとって一戸建て住宅の場合、「プール」には特別な思い入れがあります。プールがある家は「豪邸」とみなされるのです。文字通り「プール付き豪邸」です。実際にプールを使う人は少ないのですが、条件反射的にそうなっています。現在、プール付きマンションに人気が出ているのもこの延長上にあるのではないかと思われます。

 

 ちなみにアメリカでは「暖炉」がある住宅も「豪邸」とみなされ、ここにも「プール付き」と同じような条件反射が見られます。

 

 ホテルには(係員がキーを預かりエントランスから駐車場まで車を回す)バレットサービスをしてくれるところがありますが、コンシェルジュが常駐するマンションで、「乳母車のバレットサービス」を提供するマンションも登場しました。

 また、自転車用の「単なる駐輪スペース」を超えて、「ピット」としても機能する共用の自転車専用スペースを設けたマンションも登場していて、専門業者を呼んだワークショップが開催されています。

 

             ジャパン・トランスナショナル 代表 坪田 清 

 

三井不動産リアルティ㈱発行

REALTY real-news Vol.22 3月号 2017年 掲載