全般的に好調なアメリカの住宅市場の中で下落するニューヨークの超高額マンション

 リーマンショック後の急落から随分と時間がかかりましたが、一部にまだ弱さが残るとは言え、アメリカの住宅市場はほぼ完全回復した模様です。その一方で、ニューヨークの一戸、数十億円という超高額マンションのセグメントでは、大幅な価格下落が起きてきます。

 

 前者は各種の統計で判断できます。「量」の面で重要な統計は「新築住宅着工件数」なり、「既存住宅販売(中古住宅の売買件数)」などですが、月によっては市場の急落が始まった2007年夏当時の水準になりました。「価格」の面では、代表的な指数であるケースシラー住宅価格指数が過去最高だった2006年夏の水準に追いつくに至っています。

 

 一方、「ニューヨークの超高額マンション」についてはこれといった決め手となる統計がありません。実際の取引事例や取りざたされているいろいろな逸話を元に話をすることになります。

 

 ニューヨークのマンションの史上最高額による取引は2014年の12月に発生した「1億47万ドル(114.5億円・一戸の価格である事に注意)」ですが、この1年後くらいから売れ行きが悪くなってきた感じです。

 

 今はそれが「売れ行き鈍化」にとどまらず、「価格の全面的な下落」となっているわけです。ピーク時と比べて大体、10%~25%程度、値下がりしています。市場ではリスティングしている売却希望価格を切り下げる例、あるいはリスティング価格からかなりの値下げをして成約している例が相次いでいます。

 

 例えば2014年に3,170万ドル(36.1億円)である超高額マンションを買った業者は3,890万ドル(44.3億円)で売り抜けようとして失敗、その後2,500万ドル(28.5億円)でリスティングし直したが結局2,350万ドル(26.8億円)で損切り売却をしました。買値に対して26%の下落ということになります。

 

 先行して起きたこの「超高額(ウルトラ・ラグジュアリー)マンション」というセグメントの下落は、その下の「高額(ラグジュアリー)」なマンション相場の下落を招き、いまはさらにその下の100-200万ドル(1.14-2.28億円)という、マンハッタンでは平均的な価格帯のマンション市場の勢いも削いでしまいました。今、ニューヨークで調子が良いのは、50万ドル(5,700万円)クラスの大衆向け物件です。

(ドル=114円 2017年1月30日近辺のレート)

 

              ジャパン・トランスナショナル 代表 坪田 清

 

三井不動産リアルティ㈱発行

REALTY real-news Vol.21 2月号 2017年 掲載