ホテル業界での最近の最も大きな話題と言えば、マリオットがスターウッドを122億ドル(1.38兆円)で買収した事でしょう。 これは先行したハイアット、錦江飯店、中国投資公司等を押えた逆転買収で、スターウッド側のアドバイザーだった投資銀行・ラザードの辣腕が光ります。
この合併で両社を合算すると5500棟、110万室を擁する世界最大のホテル会社が誕生します。2位はヒルトンで73.6万室、3位はインターコンチネンタルで70.2万室です。
このディールが発表された3週間後にはヨーロッパ最大のホテル会社であるフランスのアコーが、サボイやラッフルズといった名門ホテルを擁するFRHIを26億ユーロ(3200億円)で買収する事が発表されました。この他にも中堅以下でM&Aが多発しています。
ホテル業界でのM&A多発の原因は2つです。
まず高まる稼働率を背景に、ホテルの現物不動産としての価格が高くなってしまいました。M&Aなら、簿価をそのまま引き継いで取り込めます(但し配当負担は増えます)。
もう一つの狙いは巨大化する事によってシステム費負担、特に予約システムへの投資の負担を薄めようという物です。
現在、いわゆる「オンライン・ホテル予約サイト」経由による予約はホテルの全ての予約件数の40%と言われています。室料の価格主導権はこれらのサイトに移りつつある面があり、ホテル会社にとっていかに直販比率を高めるかは至上命題なのです。
当初スターウッドの買収に乗り気ではなかったマリオットが買収に踏み切った最大の要因は、「110万室」という巨大さなら、オンライン予約サイトに正面から挑めると考えたことでした。
その他の近年の動きとしては「ブティックホテル(ラブホテルの事ではない)」と呼ばれる、小型でサービスを絞りながらも高級路線を狙ったホテルの台頭があります。
一言で表現すると「尖ったホテル」です。元々は独立系のホテル会社から始まりましたが、今は大手チェーンも手掛け、例えば先のスターウッドの「Wホテル」ブランドがその一つです。
(ドル=113円 ユーロ=123円 3月1日近辺のレート使用)
ジャパン・トランスナショナル 代表 坪田 清
三井不動産リアルティ㈱発行
REALTY real-news Vol.10 3月号 2016年 掲載