なにゆえ世界の大都市の住宅価格がこんなにも高騰してしまったのか、原因としてよく指摘されるのは次の2つの要因です。
一つは中国人による旺盛な投資です。この影響が顕著なのは、前出の表の中ではバンクーバーとシドニーで、カナダでは他にトロント、オーストラリアではメルボルンでもこれが大きな要因となって住宅価格が上昇しました。ちなみに、大陸の中国人による投資によって最初に住宅価格が高騰したのは、香港でした。
住宅に関する「中国人による投資先の国別の額」という見方をしますと、トップになるのは「アメリカ」か「オーストラリア」です。調査機関によりどちらがトップになるかが異なっているので、たぶん同じくらいなのでしょう。
ニューヨークやロンドンでも、中国人による投資がやり玉にあがる事があります。しかしこれらの都市はそもそもの市場規模が大きく、かつ中国以外にも世界中からの投資を集めています。中国人による高値買いは「いくつかある価格高騰の原因のうちの一つ」という認識がされています。
世界の大都市の住宅価格高騰を招いた、もう一つの大きな要因は金融緩和です。長期にわたる世界規模の金融緩和の結果、マネーの行き先が大都市の住宅に向かっているとも言えますし、住宅ローン金利が歴史的な低水準にあるので住宅が高値でも買いやすい状態にあるとも言えます。
ノルウェー、スウェーデン、デンマークといった、中国人の投資とは無縁の都市でも住宅価格が高騰しています。またオーストラリアでは国全体で見た住宅ローンの残高合計が膨れ上がりすぎ、リスクだとして警鐘が鳴らされています。これらは金融的要因です。
今のような価格水準でも「合理的だ」とする意見はあります。しかし理屈はさておき、平均的な住宅の価格が「1億円」では地元の人の手が届くわけがありません。どう考えても高すぎると思います。
ジャパン・トランスナショナル 代表 坪田 清
三井不動産リアルティ㈱発行
REALTY real-news Vol.7 12月号 2015年 掲載