アメリカは世界でも突出した「リート大国」であり、またお国柄のためか、「変わり種リート」も目立ちます。最も有名な物は「刑務所リート」でしょう。2社が上場していて、片方は約100ヶ所、もう片方は約60ヶ所の刑務所(矯正施設)を運営しています。
なぜ刑務所がリートになったのかは、若干の説明が必要です。それはテネシー州が1984年に刑務所業務を部分的に民営化した事から始まります。刑務所運営費用の増大に悩んでいた同州は、民営化した方が効率化が図られて安上がりになると考えたのです。
その後、民営化の動きはアメリカ全土に広がり上記2社も事業規模を拡大し続けて上場、2013年にともにリートに「衣替え」したのですが、このくだりも若干の説明が必要です。
アメリカでは「リート」というのは「法人税法上の概念」、即ち普通の株式会社が一定の要件を満たしている事により税が課税されないという税法上の制度だと理解した方が良いのです。専用の法律に基づいて「リート(不動産投資信託)」という特殊な器を用意する日本の制度とは大きく異なります。このような定め方をする国はアメリカ以外にイギリス他、いくつもあります。2社とも事業形態を少し整えれば「リート適格」になり課税上の優遇を受けられたのでリートとなる事を選択したのであって、日本のリートのように当初からリートとなる事を目的としていた訳ではありません。
「民営化」という枠組みではその会社は利益を追求するのが当然です。利益を追求すればこそ効率性も追及され、その結果、公共の負担も減って安上がりになるという論理です。実際、費用効率の実績を調べると単純な比較では民営化した方が受刑者一人あたりのコストが安くなっていました。ところが、民営刑務所はコストのかかる受刑者を州の刑務所の方へ送って負担を免れているので、コスト安は見かけ上の物だとの反論もあります。なんともアメリカ的な議論です。
ジャパン・トランスナショナル 代表 坪田 清
三井不動産リアルティ㈱発行
REALTY real-news Vol.6 11月号 2015年 掲載