中国・デベ準大手のデフォルト懸念がアジアの金融市場に影響を与える

 今年の上半期、中国の不動産会社のうち、世界のメディアを最も騒がせたのは「佳兆業集団」という深圳本拠のマンションデベ準大手です。同社は香港市場でのみ上場、積極的に外貨建てで資金調達をしていたのですが、社債のデフォルト懸念から世界的な大騒ぎを引き起こしました。

 

 デフォルト懸念が公然と言われ始めたのは1月初めです。この時点で、佳兆業はすでにHSBCからの外貨建てローンの金利を支払えないという事態に陥っており、さらに会長が辞任している事も判明、今後、外貨建て社債の返済にも窮する事も明らかになったのです。

 

 ローンとは異なり、社債の支払いは待ったなし(香港では30日間の猶予制度がありますが)です。「待ったなし」というのは、デフォルトが確定すれば、その会社の社債の流通価格がただちに無価値同然に下落するという事です。そのような会社は二度と社債市場では相手にされません。つまり一旦デフォルトを起こすと社債による資金調達の道が閉ざされてしまうのです。銀行もそれにならいます。企業にとっては致命的な話です。

 

 話は飛びますが、投資における世界的人気商品の「ハイイールド債(高利回り債)」には「USハイイールド債」「欧州ハイイールド債」「アジア・ハイイールド債」等があります。

 いずれもデフォルトのリスクが比較的高い会社により比較的高い利回りで発行された証券から組成された金融商品です。

 

 「アジア・ハイイールド債」の中身の過半を占めていたのが「佳兆業」のような中国本土のデベの外貨建て社債です。「佳兆業」の一件を受けて中国デベの社債全体が嫌われ、1月末以降、アジア・ハイイールド債価格までもが大幅下落するという事態に陥りました。

                       ジャパン・トランスナショナル 代表 坪田 清

三井不動産リアルティ㈱発行

REALTY real-news Vol.5 10月号 2015年 掲載