火が付いていた「中国ガラガラポン」の導火線

 佳兆業の一件の経緯を整理してみましょう。年明け早々に明らかになったのは、同社が昨年末に外貨建てローンの金利を払えず、またその直前に同社の会長が辞任していた事でした。その後、マンション事業での共同事業者から違約による合弁の解消を請求されました。借入金は公表数字の倍以上である事、手元現金は決算書よりもはるかに少ない事も明らかになりました。資金繰りの窮状を見て、天津本拠のデベ、「融創中国」が救済買収に入ろうとする局面も生じました。

 

 佳兆業が突然、資金繰りに行き詰まった理由も明らかになりました。中国ではマンションの販売時にはその都度、当局からの許可をえなくてはいけないのですが、深圳市当局が佳兆業の11のプロジェクトに関して、理由を明かさずにこれを凍結していたのです。

 

 販売許可凍結の理由は今も明らかにされていません。しかし誰もが考えたのは中国で進められている腐敗摘発運動との関連です。深圳では市の元公安トップが昨年、別の不動産がらみの収賄で拘束されていて、この拘束の直後、佳兆業の創業3兄弟は香港へ逃げ出していました。それほど3兄弟はこの元公安トップと親しかったのです。

 

 佳兆業の問題が一大事件とされたのは、この一件が同社に限った個別特殊な事件とはとても見えないからでした。決算書の信用度にしてもパージのとばっちりにしても、構図的にはどの中国のデベでも起こりそうな話なのです。投資家がこれを嫌うと、不動産セクターが外貨建ての資金調達が出来なくなり、いくつものデベが大変な窮地に陥ります。

 

 この窮地を救ったのは、佳兆業の本拠地・深圳でのマンション市場の好転の本格化です。年初ころから中国の巨大都市では市況が改善していたのです。また市当局にしても、事態の広がり方は予想外だったはずです。昨年末に辞任した同社の会長は元の職に復帰、販売停止は徐々に解除されました。こうしてうやむやな部分を残したまま、「中国ガラガラポン」の導火線に着いた火はまた一回、消し止められたのでした。

                       ジャパン・トランスナショナル 代表 坪田 清

三井不動産リアルティ㈱発行

REALTY real-news Vol.5 10月号 2015年 掲載