ヨーロッパの不動産市場で海外からの投資を最も多く受け入れている国は断トツにイギリスで、これにフランスとドイツが続きます(ちなみに直近で海外からの不動産投資が急増しているのは、元気をとり戻し始めたスペインです)。ロンドンには世界中からの投資資金が集まっています。日本からは見えにくい投資元としては、ロシア、ブラジル、カタール、南アフリカなどがあります。四カ国とも、いわゆる「資源国」です。
ロシア人はロンドンの高級住宅を買いあさりましたが、ペーパーカンパニー名義や信託名義で取得されるものが多く、うさんくさく見られてもいます。ブラジル勢は昨年11月にシティにある「タケノコ」に似た外観の名物ビルを7.26億£(1408億円)で買いました。このビルは地元では「ガーキン(きゅうり)」というニックネームで呼ばれ、再保険大手のスイス・リが入居しています。
カタールはテムズ川沿いに建つ「ザ・シャード」というヨーロッパで一番背が高いビル(87階建て・310m)の建築資金を出し、他の多数の不動産や有名デパートのハロッズ、さらにサッカークラブも買収、、FIFAでわいろ疑惑が取りざたされている2022年ワールドカップの開催権も取得し、一時期まで、向かう所、敵なしでした。しかし例えばその「ザ・シャード」はこの7月で竣工から2年が経ちますが、オフィス部分は未だにがら空きです。
カタールは「今後は商業的な採算も考慮して投資先を決める」という趣旨の発表をし、世界を苦笑させました。
ロンドンでは住宅市場も、昨年の半ばごろまでは上昇の一途でした。しかし8月頃から勢いが消え、秋にはデータ上も勢いが鈍ったことがはっきりしました。これは政府による住宅ローン規制や豪邸税(豪邸にだけかける税)導入問題などの影響もあります。
(£=194円 6月26日近辺のレート)
ジャパン・トランスナショナル 代表 坪田 清
三井不動産リアルティ㈱発行
REALTY real-news Vol.2 7月号 2015年 掲載