ニューヨークの超名門ホテルが分譲マンション主体へコンバージョン

 ウォルドルフ・アストリアと言えばアメリカを代表する超高級・超名門ホテルですが、全1,413室のうち、約1,100室をラグジュアリーな分譲マンションにコンバージョン(用途変更を伴う大規模な改装)をする予定です。日本でいえば赤坂プリンスやホテルオークラを建て直さずに隣接する数室の壁を取り払って連結、億ションとして分譲するようなものです。ウォルドルフ・アストリアの残りの部屋は従来通りヒルトンが運営を続けます。

 

 超高級ホテルについて同様なことをした例に「プラザ合意」で有名なプラザホテルがあります。こちらもニューヨークにある超高級ホテルで、2005年から3年かけてコンバーションの工事がされました。ホテルの部屋数はぐっと少なくなり、また、眺めの良い部屋はみな億ション(円価)のマンションとして売られました。これらのマンションは、今なら10億ションの値段が付いても不思議ではありません。

 

 今回のウォルドルフ・アストリアは、2014年10月に中国の安邦保険がヒルトンから 19.5億ドル(1,950億円)という破格な高値で購入しました。安邦保険は今年、スターウッドの買収に一時、色気を示したことでも大いに名を馳せましたが、世界の不動産ビジネス界へのデビュー取引は、このウォルドルフ・アストリアの買収の一件です。当時、同社は無名の存在であり、また価格も法外だったので、これは非常にショッキングなディールでした。

 

 安邦保険の購入価格はホテル一室当たり、138万ドル(1.38億円)になります。当時そのあまりの高さにこの取引は「愚行だ」とさえ言われました。ところが今回のラグジュアリーマンションへのコンバージョン計画で、評価は一転します。

 

 コンバージョンの費用は、一声 10億ドル(1,000億円)と言われています。ヒルトンから買った価格と合わせても、30億ドル(3,000億円)です。1,100室から200戸の超高級マンションを作り出し、それらが一住戸1,500万ドル(15億円)で売れれば総額30億ドル(3,000億円)です。このマンション分譲部分だけでほぼ元が取れ、残ったホテル部分は財務的には「おまけ」のようなものなのです。「愚行」呼ばわりされた安邦保険は、実はしたたかでした。

 

(ドル=100円 2016年8月26日近辺のレート)

                         ジャパン・トランスナショナル 代表 坪田 清

三井不動産リアルティ㈱発行

REALTY real-news Vol.16 9月号 2016年 掲載

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