EU離脱が世界の不動産市場へ与えた影響をとりあえずまとめる

 英・EU離脱の不動産ビジネスへの影響を日本時間の7月14日の時点でまとめます。

 

 国民投票(6月23日)の翌日、イギリスのリート指数は最大26.4%の、住宅株指数は最大16%の下落をしました。後者は銘柄によっては26%強の下落をしたものもあります。ポンドも下落したのでドル建てや、ましてや円建てで見ると下落幅はもっと大きくなります。

 

 7月4日の週はオープンエンド型のファンドである大手商業不動産ファンドの中で「引き出し請求の受付けを停止」するところが多発、2007年夏のサブプライム・ショックと似た状況に一瞬、ひやりとしました。しかし翌週になって、アメリカのあるファンドが「イギリスの商業不動産を10億ポンド(1380億円)規模で投資したい」と表明するなどし、7月14日の時点では大事には発展していません。

 

 「引き出し請求」に殺到したのは小口投資家で、大口投資家の動きはまだ見えていませんが、商業不動産ファンドによる換金売りが引き金となった市場の劇的な急落がありえます。

 

 また、イングランド銀行のカーニー総裁は住宅市場にリスクがあるとかねてから指摘してきました。借金で賃貸住宅に投資した投資家が、投げ売りに走る可能性です。王立チャータード・サベイヤーズ協会の6月の住宅価格指数はかなり下げています。

 

 ロンドンが持つ「金融センター」の座を狙っているのは、本命がパリとフランクフルト、穴馬がダブリンとアムステルダムです。しかし金融都市としての厚み、人材や法律の整備、インフラの充実等を比較すると、どこもロンドンとはまったく比べ物になりません。

 

 ブレグジットが海外の不動産ビジネスに及ぼした事項を並べておきましょう。まず、金融業関連の職場が移動してくると期待して、ドイツの賃貸マンションリートが値を上げています。EUで唯一の英語圏となるアイルランドではオフィス市場が好調ですが、ポンド安でイギリスからの買い物観光客の減少が見込まれ、モールへの打撃が懸念されています。

 また、アメリカの利上げが遠のいたとの観測から、先進国で最も利回りが高いシンガポールのリートに人気が出ています。高騰が続いているカナダの住宅市場では利上げが難しくなり、採りうる価格抑制策の幅が狭まりました。マレーシアのカジノ会社ゲンティンはイギリス国内にカジノ多数を持っていることが嫌われて株価を下げています。

                          (ポンド=138円 2016年7月14日近辺のレート)

 

ジャパン・トランスナショナル 代表 坪田 清

 

三井不動産リアルティ㈱発行

REALTY real-news Vol.15 8月号 2016年 掲載

0 コメント