2015年9月執筆実績

アメリカで二極化する好調なSCと不調なSC

 アメリカのSCリート上位三傑は1位サイモン・プロパティ、2位ジェネラル・グロウス・パートナーズ、3位メイスリッチなのですが、その1位が3位に対して敵対的買収を試みるという事件がこの3月に勃発しました。結局、このM&A話はメイスリッチ側からの根強い抵抗にあい、実現に至りませんでした。

 

 一般論としてアメリカのSC業界の業績は下降気味なのですが、その中でサイモン・プロパティとメイスリッチは例外的に好調です。アメリカのSC業界が不調に陥った当初の原因は、リーマンショックをきっかけとする個人消費の減退でした。

 

 その後、アメリカ経済はかなり回復、しかしそこへ新たな厄災が降りかかります。コストコ他の低価格路線のチェーンの拡大も痛いのですが、「インターネット通販」の加速度的な広がりから受ける影響も深刻です。直撃を受け、閉鎖店舗がいくつもある、中には閉鎖店舗の方が多いSCも出てきました。店が開いていない訳ですからお客様が来るわけもなく、このような状態を「ゾンビ化」と呼びます。昔、SCがゾンビ化する原因は、近傍にそのSCを大きく上回る新しいSCが出来てしまう事でした。大型のSCの方へ行けば既存のSCの品ぞろえは全部ありますから、もう小さな方には誰もいかなくなる訳です。

 

 ところがインターネット通販に対しては店が「大きい」だけでは対抗できません。今、この打撃をもろに受けている所が多いのです。

 

 そのような中、サイモン・プロパティとメイスリッチのSCは好調な訳ですが、両社に共通しているのは高級路線のSCだという事です。これは非常に示唆に富む話です。「高級路線のSC」の主たる顧客層である高額所得者は、買い物の際に事前にインターネットで深く調べたりせずに、店舗での店員さんのアドバイスや、実物同士の見比べで決断する傾向が高い事が分かっています。

 

 高級路線のSCには「インターネット通販」では代替できないものがある可能性があるようです。

                       ジャパン・トランスナショナル 代表 坪田 清

三井不動産リアルティ㈱発行

REALTY real-news Vol.4 9月号 2015年 掲載

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アラモアナ・ショッピングセンターの驚くような売買価格

 ハワイのアラモアナSCは今では全米第16位の規模ですが、昔は全米最大だった時期もある巨大SCです。その25%持分が13.7億$(1660億円)で売却される事が3月に報じられました。売主は米SCリート第2位のジェネラル・グロウス・プロパティーズです。 100%持分に換算するとなんと54.8億$(6630億円)になりますが、この物件の過去の売買価格を知る者にとっては、驚異的な価格です。

 

 昔、この超巨大SCを開発したのはハワイの海洋土木が本業のデリンガムという会社です。同社は副業として同SC以外にも中小の不動産をいくつも保有していました。しかし多額の不動産の含み益が株価に反映されていないとして活動家株主からの攻撃を受け、すべての保有不動産を売却して株主に還元することにしました。アラモアナ・ショッピングセンターはその際の目玉物件として売りに出されたわけです。1982年に行われた入札の1番札はダイエーの3.2億$(387億円、当時のレートで約800億円)で、2番札より約1億$(121億円、当時のレートで約240億円)も高いものでした。

 

 その後、ダイエーは1999年にこのSCを約8億$(968億円)で先のSCリート、ジェネラル・グロウス・プロパティーズに売却しました。この間に増床等、そこそこの追加投資をしているので、単純に3.2億$(387億円)が8億$(968億円)になった訳ではありませんし、それが今回単純に54.8億$(6630億円)の評価になった訳ではありませんが、それぞれ大変な利益を得たことは間違いありません。なおジェネラル・グロウス・プロパティーズは同SCで現在も大規模増床の工事中です。

 

 ちなみにダイエーは1990年代後半から経営悪化が表面化、後に経営破綻しました。ジェネラル・グロウス・プロパティーズも2009年に経営破綻した後、ファンドのブラックストーンの手で再生に成功し、現在に至っています。

($=121円 8月28日近辺のレート)

                       ジャパン・トランスナショナル 代表 坪田 清

三井不動産リアルティ㈱発行

REALTY real-news Vol.4 9月号 2015年 掲載

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