2015年12月執筆実績

こんなに高くなった! 世界の大都市の住宅価格

 世界の大都市の住宅価格が、非常に高くなっています。まずデータをご覧ください。為替レートには各々のデータが発表された日、近辺の物を用いて、換算しています。

 

                メジアン価格       平均価格

    マンハッタン     1億2000万円      2億2800万円

    サンフランシスコ     8184万円   

    バンクーバー                              1億円

    シドニー            9126万円

    ロンドン                                9560万円

 

 非常にざっくりした、正確さには疑問が持たれる表に見えますが、どの都市でも「メジアン価格」なり「平均価格」が1億円前後というのは、為替によるマジックを考慮しても、やはり驚くべき水準です。

 

 マンハッタンでは「メジアン価格(1.20億円)」と「平均価格(2.28億円)」に大きな差がある事が目立ちます。2倍近くもの差がつく理由は、「超高額住宅」の取引がかなりあるからです。 10億円から120億円という超高額な価格帯のマンションがそれで、これらが平均を大きく引き上げています。マンハッタンでは「平均的な住宅」というと「平均価格」の物件より「メジアン価格」の物件の方が実感に合います。

 

 ちなみにロンドンやサンフランシスコでもこのような超高額物件の取引はある事はあるのですが件数が少なく、「平均」にあまり影響を与えません。上記一覧表の中のサンフランシスコ、バンクーバー、シドニー、ロンドンについては、メジアン価格≒平均価格と考えて差し支えありません。マンハッタンでだけ、非常に大きな差が付きます。

                       ジャパン・トランスナショナル 代表 坪田 清

三井不動産リアルティ㈱発行

REALTY real-news Vol.7 12月号 2015年 掲載

0 コメント

世界の大都市の住宅価格の高騰の原因は「中国人」と「金融緩和」

 なにゆえ世界の大都市の住宅価格がこんなにも高騰してしまったのか、原因としてよく指摘されるのは次の2つの要因です。

 

 一つは中国人による旺盛な投資です。この影響が顕著なのは、前出の表の中ではバンクーバーとシドニーで、カナダでは他にトロント、オーストラリアではメルボルンでもこれが大きな要因となって住宅価格が上昇しました。ちなみに、大陸の中国人による投資によって最初に住宅価格が高騰したのは、香港でした。

 

 住宅に関する「中国人による投資先の国別の額」という見方をしますと、トップになるのは「アメリカ」か「オーストラリア」です。調査機関によりどちらがトップになるかが異なっているので、たぶん同じくらいなのでしょう。

 

 ニューヨークやロンドンでも、中国人による投資がやり玉にあがる事があります。しかしこれらの都市はそもそもの市場規模が大きく、かつ中国以外にも世界中からの投資を集めています。中国人による高値買いは「いくつかある価格高騰の原因のうちの一つ」という認識がされています。

 

 世界の大都市の住宅価格高騰を招いた、もう一つの大きな要因は金融緩和です。長期にわたる世界規模の金融緩和の結果、マネーの行き先が大都市の住宅に向かっているとも言えますし、住宅ローン金利が歴史的な低水準にあるので住宅が高値でも買いやすい状態にあるとも言えます。

 

 ノルウェー、スウェーデン、デンマークといった、中国人の投資とは無縁の都市でも住宅価格が高騰しています。またオーストラリアでは国全体で見た住宅ローンの残高合計が膨れ上がりすぎ、リスクだとして警鐘が鳴らされています。これらは金融的要因です。

 

 今のような価格水準でも「合理的だ」とする意見はあります。しかし理屈はさておき、平均的な住宅の価格が「1億円」では地元の人の手が届くわけがありません。どう考えても高すぎると思います。

                      ジャパン・トランスナショナル 代表 坪田 清

三井不動産リアルティ㈱発行

REALTY real-news Vol.7 12月号 2015年 掲載

0 コメント

ニューヨークの「超高額マンション」というセグメント

 ニューヨークのマンション市場で東京と最も大きな違いを感じるのは「超高額マンション」というセグメントの存在だ。戸当たり日本円にして30億円から120億円以上という信じられないような超高価格帯のマンション群である。香港やロンドンにも同じような価格帯の住宅はあるのだが、取引ボリュームはニューヨークが圧倒的だ。

 

 買っているのはアメリカ人を中心とした世界中の大金持ち達だが、最近の傾向としてペーパー・カンパニーを仕立ててその名義で買う例が著しく増え、これを問題視する向きがある。真の買主が分からないことを利用し、不正行為や犯罪で得た資金で買う外国人富豪が少なからずいると見られているのだ。

 

 アメリカ人富豪の間でもペーパー会社で買う事が流行っている。不動産を買う時に、それ専用の会社を設立して購入の形式的な主体とする事は、アメリカの商業不動産投資では昔から行われていた。このような買い方ではある程度以上の額の物件になるとメリットがデメリットを上回っている。

 

 これら超高額マンションのセグメントは「トップエンド」とか「ウルトラ・ラグジュアリー」と呼ばれている。単純に坪単価を計算すると、大体2000万円から3500万円位で、また、必ずしも新築マンションの方が高いという訳でもない。

 

  目立つのが、上下の階を階段や専用エレベータで連結したタイプの物件で、これらは「デュープレクス」と呼ばれる。設計段階からデュープレクスとして作られた物と、上の階と下の階を別々に買って(買い増して)、床の一部を壊して階段を後付けし、その上で住戸内をリノベしたものがある。中には三層を連結した物もあり、「トリプレクス」と呼ばれる。「トリプレクス」の所有者が直下の住戸をビッドで競り勝って買った例があり、これは「4層連結」にする事を狙ったものと見られている。

 

 上下に連結すると言っても階段なりエレベータのスペースを開けるだけであるから、取り去る床(天井)の面積はさほど大きくない。しかし日本の既存マンションでこのような工事をしたという話は聞いたことがない。耐震計算、管理組合の承認、工事騒音、みな難題だ。

 

 なお「デュープレクス」「トリプレクス」ともに、低層住宅では「二戸一」「三戸一」の意味になるので、ご注意を。

                          (ジャパン・トランスナショナル 坪田 清)

三井不動産リアルティ㈱発行

REALTY PRESS 2015年12月 掲載

0 コメント

ロンドンの不動産市場は飛び抜けて国際的

 ヨーロッパの不動産市場の中ではロンドンの国際性が飛び抜けて高く、世界中から投資資金を引きつけている。パリ、ベルリン、フランクフルトといった他の大都市とは比較にならない量だ。ロンドンがこのように国際的不動産投資資金を集めるようになった背景は次の様に整理できるだろう。

 

 第一に「英語と英米法」の国である事の有利性だ。ロンドンには元々金融取引の中心地としてのインフラがあった訳だが、これに法律行為のかたまりでもある不動産取引が乗っかった訳だ。法体系が世界で突出した大国・アメリカとよく似た「英米法」であり、かつ英語で処理されている事は海外の投資家にとって大変ありがたい事だ。海外投資家が日本で不動産の現物に投資をしようと思った場合の先方の苦労を想像すればよいし、みなさまの中にも日本側の窓口として苦労された方がいらっしゃるかもしれない。

 

 第二に、これは今となっては結果的にラッキーな選択になった訳だが、「ユーロ」に参加しなかった事である。ギリシャ危機が始まってから約6年が経ち、「ユーロ危機」という言い方がすっかり定着した。危険を感じた資金はユーロ圏内ではドイツに逃げ、ユーロそのものを忌避した資金はイギリスとスイスに逃げた。しかしスイスは不動産市場のサイズが小さく、結果、ヨーロッパの不動産向け投資資金はロンドンに集まることになった。

 

 第三に、一時期までの資源ブームがある。今でこそ原油ほかの資源価格は低迷しているが、しばらく前まで資源国は大変、金満だった。国で言うと中東湾岸諸国、即ちドバイ、アブダビ、カタール、クエート他、これに南アフリカ、ロシア、ブラジル、インドネシア、マレーシア等が加わる。中国は資源国ではないが巨額の貿易黒字を背景に世界中で投資、その一環としてロンドンでも投資をした。シンガポールも類似している。ロンドンへは日本勢も大型投資をしている。

 

 これら投資元の国のほとんどはアメリカへの不動産投資国と重なるのだが、「カタール」と「ロシア」は顕著な例外だ。「カタール」はもっぱらヨーロッパ、特にイギリスへの投資に偏重、それを反省してアジアにも重点投資しようとした矢先に原油安となり、今は一時の勢いが衰えた。「ロシア」のアメリカへの不動産投資が少なさは、冷戦の名残なのか、単に地理的に遠いためか、あるいはアメリカは何かとうるさいからだろうか。

                          (ジャパン・トランスナショナル 坪田 清)

三井不動産リアルティ㈱発行

REALTY PRESS 2015年12月 掲載

0 コメント