2015年11月執筆実績

アメリカの変わり種リート/刑務所リート

 アメリカは世界でも突出した「リート大国」であり、またお国柄のためか、「変わり種リート」も目立ちます。最も有名な物は「刑務所リート」でしょう。2社が上場していて、片方は約100ヶ所、もう片方は約60ヶ所の刑務所(矯正施設)を運営しています。

 

 なぜ刑務所がリートになったのかは、若干の説明が必要です。それはテネシー州が1984年に刑務所業務を部分的に民営化した事から始まります。刑務所運営費用の増大に悩んでいた同州は、民営化した方が効率化が図られて安上がりになると考えたのです。

 

 その後、民営化の動きはアメリカ全土に広がり上記2社も事業規模を拡大し続けて上場、2013年にともにリートに「衣替え」したのですが、このくだりも若干の説明が必要です。

 

 アメリカでは「リート」というのは「法人税法上の概念」、即ち普通の株式会社が一定の要件を満たしている事により税が課税されないという税法上の制度だと理解した方が良いのです。専用の法律に基づいて「リート(不動産投資信託)」という特殊な器を用意する日本の制度とは大きく異なります。このような定め方をする国はアメリカ以外にイギリス他、いくつもあります。2社とも事業形態を少し整えれば「リート適格」になり課税上の優遇を受けられたのでリートとなる事を選択したのであって、日本のリートのように当初からリートとなる事を目的としていた訳ではありません。

 

 「民営化」という枠組みではその会社は利益を追求するのが当然です。利益を追求すればこそ効率性も追及され、その結果、公共の負担も減って安上がりになるという論理です。実際、費用効率の実績を調べると単純な比較では民営化した方が受刑者一人あたりのコストが安くなっていました。ところが、民営刑務所はコストのかかる受刑者を州の刑務所の方へ送って負担を免れているので、コスト安は見かけ上の物だとの反論もあります。なんともアメリカ的な議論です。

                       ジャパン・トランスナショナル 代表 坪田 清

三井不動産リアルティ㈱発行

REALTY real-news Vol.6 11月号 2015年 掲載

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アメリカの変わり種リート/無線アンテナリート・屋外広告板リートほか

 アメリカのその他の変わり種リートと、リート制度を利用した最近の事業再編の動きを見てみましょう。

 

 変わり種リートとして、「無線通信アンテナ」の保有・賃貸に特化したリートがあります。主たるクライアントは携帯電話会社で、最大手は約22,000の無線アンテナ基地局を持っています。メキシコ、ブラジルを皮切りに、海外進出にも積極的です。

 

 「屋外看板用の板と土地」の賃貸に特化したリートもあります。日本でもアメリカでも特に幹線道路沿いに大小様々な広告看板が見られますが、これらを描いたり貼ったりするための「板」、もしくはその板を建てるための「土地」を広告主に貸し付けている会社です。アメリカではこのような会社が上場してリート成りする規模に成長するのです。

 

 最近の動きとして、経営が思わしくない会社がリート制度を利用しようとするケースが目立っています。自社保有の不動産を外出ししてリート化し、リースバックを受けるのです。一時的には手元キャッシュを得て本体の株価も上昇しますが、長期的には多額の家賃負担が継続するので、このような分離が経営上の解決策になるのか疑問も持たれています。しかし活動家株主から厳しい要求がある事も多く、やむをえないという面があります。

 

 直近で話題となっている企業名を挙げると、カタログ通販で有名なシアーズ、カジノ運営大手のシーザーズ(旧社名ハラーズ)、ハンバーガーチェーンのマクドナルドがそれです。

 

 リート化するのはシアーズの場合は数百店に上る店舗、シーザーズの場合は不振にあえぐアトランティック・シティの大型のカジノ用不動産、マクドナルドの場合は同社の直営店の店舗やフランチャイズに貸し付けている店舗です。ちなみにマクドナルドが世界に保有する不動産の時価は420億$(5.1兆円)とされていて、リート化して上場されれば世界でもトップクラスの規模の不動産会社になります。

($=121円 10月30日近辺のレート)

                       ジャパン・トランスナショナル 代表 坪田 清

三井不動産リアルティ㈱発行

REALTY real-news Vol.6 11月号 2015年 掲載

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