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バブル気味のカナダの住宅市場の先行きは如何に

 カナダの住宅ブームは中国人による投資等で勢いがつき、まず西海岸のバンクーバーで価格が大きく上昇、政治問題化しましたが、「外国人が購入する場合の重課税」、「ローン融資規制」、「空き家税」といった手立てにより強引に抑え込むことに成功しました。

 

 ところが投資資金は今度は東部のトロントに向かい、同市の3月の住宅価格は対前年比で33%上昇、対前月比でも6.2%上昇と「バブル」と言って良い状態になってしまいました。5月のトロントの一戸建ての平均価格は183.1万カナダドル(1.63億円)に達しています。

 

 トロントでの住宅価格の上昇はまだ続いてはいるのですが、その速度は直近では減速気味です。上昇速度が減速した原因は遅まきながらバンクーバーを見習って政府と州、市が協調して住宅価格抑制に入った(入る構えを示した)事と、価格が高くなった事により「売る人」、すなわち供給が増えた事にあります。

 

 トロントがこういう状況にある中で、市場をヒヤッとさせる事態が起きました。

 

 4月初旬、「ホーム・キャピタル」という住宅ローン融資大手のノンバンクの株価が暴落したのです。同社は同社に出入りする「モーゲージ・ブローカー」の仲介で住宅購入客にローンを融資しているのですが、ブローカーのうち45社が申し込み者の所得等を偽って申請していた事が判明しました。同社は質の悪い融資を相当額、抱え込んでしまっていたのです。

 

 この件について、トロントがあるオンタリオ証券委員会が同社は情報開示基準を満たしていないとしたことが、今回の株価暴落の直接的な原因です。同社は実質で年利22.5%という大変な高金利により年金基金から短期資金を借り入れ、当座の資金繰りを付けました。

 

 今は本件は落ち着き、金融システム内でこの件が「伝染」する可能性はなくなりましたが、一時はカナダで「リーマンショック」類似の事態が起きる端緒なのではと懸念されていたのです。ホーム・キャピタルのローンの主要顧客は銀行からローンを借りられなかった人たちで、これはアメリカ流に言えば「サブプライム・ローン」に相当するからです。アメリカでサブプライム専業大手が経営破たんしたのは、リーマンショック勃発の1年半前でした。

 

 幸いなことに、ホーム・キャピタル問題は5月中旬には事態は落ち着いたわけですが、カナダの住宅が「バブル」であるとすると、今後1-3年くらいのスパンでまだ油断はできないのかも知れません。

(カナダドル=89円、 7月10日近辺のレート)

 

             ジャパン・トランスナショナル 代表 坪田 清

三井不動産リアルティ㈱発行

REALTY real-news Vol.26 7月号 2017年 掲載